トレモロユニットは兄弟機種の「ジャズマスター」と共通だが、ボディ・シェイプは異なっており、ショートスケールのネック、専用ピックアップ、ピックアップON/OFFスイッチ等の仕様が異なる。ジャズマスターより音のエッジが立った、歯切れ良く鋭いトーンがサウンドの特徴。ブリッジの手前に、登場時流行したパッド式のミュートが標準装備されているのも特徴であるが、演奏途中で切り替えるとブリッジが移動するのと同じ効果が現れ、音程が上がるという欠点があったため、取り去ってしまうギタリストも多く、他のモデルには波及しなかった。
ザ・ビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンを筆頭に、主に1960年代前半のサーフィン&ホット・ロッド・ミュージックでもてはやされた人気機種であり、ブルージーンズ結成当時の寺内タケシや加瀬邦彦も使用していた。
しかし、弦振動がボディに伝わりにくいブリッジやトレモロの構造が災いして、同社の先発商品「テレキャスター」や「ストラトキャスター」に比べてサステインに乏しく、ロック音楽が次第に伸びのあるギター・サウンドを求めていくにつれて人気が衰え、1975年に製造中止となった。
1986年、フェンダー・ジャパンよりリイシュー。型番は現在まで一貫してJG66-と銘打たれているが、実際は1963~64年の仕様(バイン ディングのないネック、ラウンド貼りフィンガーボード)を基にしている。ヘッドのフェンダーロゴは、どういうわけか金文字に黒縁のトランジション・ロゴで はなく、金と黒の配色が逆のモダン・ロゴが付けられている。ミュートは省略されている。
1990年代初頭、ニルヴァーナのカート・コバーンが使用した事で、オルタナ、グランジ界 で人気機種となった。彼のモデルに関しては本人の項を参照のこと。彼のモデルに倣って、ピックアップのハムバッカー化、ブリッジのチューン・O・マティッ ク化などの大幅な改造を施すことが流行し、ひいては日本の某大手楽器店限定のコピーモデルが、フェンダー・ジャパンよりリリースされるに至る。
この流れを受けて、2000年にはようやくフェンダー・USAでもリイシューが開始された。ジャパン製とは異なり、フラット貼りフィンガーボードで、ヘッドには正しいトランジション・ロゴが貼られている。ミュートも標準装備されている。